【短編】盛夏の月光浴

 主に群馬県前橋市にて、作詩や朗読などでご活躍されている、詩人戦隊ポエーマンズの一員、月白さん。

 今回は、ポエーマン濃紅さんや、雑音舞踏軍さんの設定をお借りして、日常&バトルの短編小説を執筆したのです(`・ω・´

 直接お会いした時、とても嬉しそうにしていらっしゃったのが、何だか私まで幸せの御裾分けに預かるみたいで……!

 また、セリフ部分の朗読もして頂けたのです。カッコイイ!

 前回に引き続き、セリフ部分の朗読の音声動画も掲載いたします。

 こうして、セリフが生命を帯びて空に羽ばたく様を目の当たりにすると、今流行りのシチュエーションボイスとかASMRとかいたいに、もっと色んな文章にチャレンジしてみたいという気持ちも湧き出てきます。

 Twitterで公開した時は6月22日なのですが、『交流を通して自分の活動の幅を広げていきたい』という今年の目標が、半年の内に叶えられるなんて、感慨深いです。

 月白さん、こちらの方こそ、本当にありがとうございました(^^*


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https://twitter.com/sktr11139/status/1144560388354166784

 

https://twitter.com/sktr11139/status/1144560817397886977

 

 長い梅雨が明け、盛夏を思い知らされるように蒸し暑さが纏わりつく、ある日の昼下がり。

 広大な総合運動公園にある、球場の裏手には、タピオカドリンクのキッチンカーが訪れていた。木陰には、一つだけパラソルテーブルが設置されている。

 ひんやりとしたプラスチックカップを、握る手の平が心地良い。テニスラケットで打つ音や、グローブで野球ボールをキャッチする音が聞こえて来る。汗をかくことさえ忘れてしまいそうな、静かな隠れ家だ。

 

「おいおい、月白くん。アップルタルトが全然減っていないじゃあないか。さてはハズレ・・・だな?」

 そう語り掛けたのは、ポエーマン濃紅。薄いピンクのシャツを、濃い目のベージュなチノパンに入れているナイスミドル。

「うーん……昨日、徹夜で歌の練習をしていたから、眠くて仕方がないんですよ」

 そう返したのは、ポエーマン月白。V字襟の半袖の上に、エスニックな平袖を羽織り、ボトムスはサルエルパンツ。東洋の民族にゆかりある、ゆったりとした衣服だ。

「あ、そうなんだ。じゃあ食べるの手伝ってあげるよ」

 言うや否や、濃紅はアップルタルトの一切れを素早く掴み、口の中に放り込んだ。

「取らないで下さいよ~。濃紅さんへのご褒美じゃないのに」

 月白は、あまり手入れが行き届いていない、ダークブラウンのショートヘアを物臭そうに掻く。

 

 ――ふいに、「ウォオーン」と甲高いサイレンが鳴る。

「あれ、野球の試合?」

「さあ? どうでしょう」

 濃紅と月白は、互いに顔を見合わせる。

 続いてどこからともなく、「キュピ、キュピ、キュピ、キュピ」とスクラッチ音が響くや否や、緊迫したバトルビートが流れてきた。戦車のキャタピラのような重苦しい低音と、砲弾をぶっ放すようなけたたましい高音。

「Hey yo! クレーマーに人気な三流日陰者タピオカショップ! 試食しか食わねぇケチババアどもの溜まり場!」

 更には、怒鳴り声にも似たラップが聴こえて来る。両ポエーマンは立ち上がって周囲を見回し、タピオカの兄さんも作業の手を止める。

「どこぞでラップバトルが始まったようだ」

「騒がしいですねぇ、もう」

 

「ガキに不法侵入されまくりの、埃塗れのキッチンカー! 味薄い、量少ねぇ、上から目線オッサンのサンドバッグ!」

 突如、タピオカ兄さんがカウンターの上に倒れ込む。熱中症かもしれない。心配した二人は近づきながら、「おい、君」「大丈夫ですか?」と言う。

「ティッシュやガムシロップ、くすねる貧乏人! うんちく大好きオタクの業務妨害! Yo! ストレスマシマシスマイルスクナメ、胃に穴が空く怒りのゲキカラタピオカ!」

 次の瞬間、兄さんの全身が炎に包まれた! 「う、うわぁー!?」と悲鳴を上げた兄さんは、冷凍庫から氷を取り出し、頭からかぶる。

「落ち着いて下さい、今消化しますから!」

 キッチンカーに乗り込んだ月白は、脱いだ上着で兄さんを包むことで、炎を消そうとした。が、炎は上着や月白の両手をすり抜けてしまう。それどころか、火達磨な兄さんの間近に来たにも関わらず、月白は一切の熱を感じない。

「これは……幻?」

 やがて蹲り、気を失ってしまうタピオカ兄さん。よく見ると、服は燃えていないし、火傷を負った様子もない。

 

「知っているぞ……心の怒り・・を増幅させ、幻の炎を発火させる、この能力を」

 そう言って濃紅が振り返るや否や、ソイツは建物の陰から姿を現した。

 ゴテゴテのラジカセを引っ提げた、タンクトップ姿の筋肉質な男。帽子を横に被っており、野球選手のアイブラックのように、目の下には赤く太い線が引かれている。

「どうだ、思い出したか! テメェの胃袋で煮えたぎる怒りをよぉ! けどな、テメェに縄張りシマをとられたオレの怒りに比べちゃ――えっ、なんだそれ線香花火か? モヤシ野郎」

 ラップを繰り出しながら歩み寄り、ソイツはふと立ち止まると、中指を突き立てた。

「怒り狂え、Heat up! 撃ちまくるぜ、Beat out! テメェらも、Burn up! 燃え尽きて、Beat down! 雑音舞踏軍所属、戦闘員パリピー、マッドフレイム! 人呼んでマッド様のお出ましだ!」

 

「雑音舞踏軍……沈黙を嫌い、爆音と騒音で世界を染め上げんとする、悪の表現集団」

 濃紅は、ミルクコーヒーのタピオカドリンクを飲みながら言った。

「どうやら、お気に入りの場所をタピオカ屋さんに取られて、奪い返しに来たらしいな。練習場所だったのか? いずれにせよ、この憩いの場の沈黙・・は気に食わんだろうな」

「困ったなぁ。タピオカおかわりするつもりだったのに」

 キッチンカーの外に出た月白は、眠そうな目を擦りながら言う。

「まあ、摂取したカロリーを燃やすには丁度良いんじゃあないの? 怒りの炎だけに。ワハハハ! 任せたぞ」

 濃紅は背後から、月白の肩を叩いてニヤニヤ笑った。マッドはというと、ラジカセから流しっぱなしにしたバトルビートに合わせて、身体を揺らしている。

「C’mon! Chicken!」

 手招きして、どちらかが挑んで来るのを待っている。

 

「せっかくの休み時間だったのに……」

 月白はそう漏らしつつも、両腕を斜めに広げた。反時計回りに半円を描き、左手中指に嵌めた指輪、月輪を がちりん 顔の前へ。

「詩人伝承……ポエトリーチェンジ!」

 掲げた右手を、静かに指輪にかざしながら唱えた。右手を降ろし、左手で心臓部を掴むようにしていると、彼は薄い青みを含んだ白色に包まれた。伸びた長髪は春の朧月のように輝き、瞳は満月に掛かる霞のようになり、遂には流麗な月白色のヒーロースーツが具現化し、身に纏う。

「その手は白き月をも掴む……月下の過客、ポエーマン月白!」

 周囲に凛とした空気が張り詰めた。急に深夜が訪れたかのように。ラジカセから流れる音声が、遠くで木霊するフクロウの泣き声のようにに、くぐもって聴こえる。

「時に、お前は月光浴を嗜むか?」

 月白の声は、さざ波のように微かに揺れていた。その瞳は、ふいに星満天を映し出したかのように、紫に染まる。

「狂気は良い。その怒り、月の狂気に導いてやろう」

「ああ!? やってみろよ!」

 マッドは首を切るジェスチャーをしてみせた。刹那、月白は瞑目し、細く息を吸う――。

 

「命ず。その本質、月の鏡に映し出せ」

 ゆっくり、はっきりと歌い上げるような、月白の朗読。

「怒りで盛装したその欲望、まこと独裁者に等しき狂気。公衆の聖域を侵す、浅ましき支配欲」

 氷の洞窟で反響するような月白の声が、マッドの耳にこびりついた。脳内で木霊するポエーマンの朗読が、深夜における異常な高揚感を齎す。月白の名を表すように、彼が背後に蒼白い月を背負う幻覚が見えた。

「その本質は赤子の泣き言、よって虚飾と断罪する。お前自身の炎で裁かれるが良い」

 月白の紫の瞳が、一際強く輝いた瞬間。ヨルガオが一斉に開花するかのように、無数の眩い光が周囲一帯で煌いた。清らかな光は水晶のように純粋を極め、そして鏡となってマッドの姿を、そして怒りの炎を、合わせ鏡のように映し出す――!

 

「はぁ? それで? お前の本質ってのはどうした? 全然気持ちが伝わってこねぇ! 説教してねぇで見せてみろよ!」

 マッドは地面を踏み付けると、浮遊していた無数の鏡が、一斉に発火した! 幻想的な月夜の幻覚は、瞬く間に火の海へと変貌する。闘志を象徴するように、マッド自身も炎に包まれる。遠のいていたバトルビートが、再び爆音を響かせる。

「甘い蜜ばかり啜る、卑怯なイケメン! 服剥ぎゃ、お菓子で肥えたブタ野郎!」

 マッドが今までよりも、更に荒々しく叫ぶ。にわかに月白の胸から、小規模な怒りの炎が生じた。

「うぐっ……」

 月白は呻き声を漏らして、自らの胸を押さえた。彼はついつい誘惑に負けて、甘いものやラーメンを食べてしまうのを、たまに後悔することがある。それによる怒りだろう。

「深夜のタイムライン、飯テロに完敗! コンビニで買っちまった、ヤケ酒で乾杯!」

 マッドは半円を描くように、右往左往しながら叫ぶ。月白の胸から生じた炎が、徐々に身体中へ燃え広がる。

「シメのラーメン、泣きながら一杯! テメェの腹ン中、後悔でいっぱい!」

 月白の全身が炎に包まれた! 幻覚とは分かっているものの、想像を絶するような熱さに片膝をつく。体内で煮えたぎる自己嫌悪。思考がおぼつかない。

 

 イスに座って高みの見物をしている濃紅も、幻覚の炎に包まれていた。同じく、誘惑に負けた自分への怒り……なのか?

「ワハハハ! 怒りの火盗んだリンゴで炙り出す甘く蕩ける罪の味かな――なんてな!」

 短歌を詠んだ彼は、自分を包む炎を利用し、タルトのリンゴを炙って食べていた。幻の炎のはずだが……。

「あれ、月白くん。食欲に負けた自分をそんなに怒っているなら、このアップルタルト全部貰っちゃって良いよね?」

 濃紅は火達磨にされながらも、平然と言ってのける。

「黙れ、濃紅。仕事を放棄したお前に、甘い蜜を啜る資格はない。卑怯者め」

 怒りの矛先が、自分自身から濃紅に向いたのだろう。それで月白の身体を包む炎が消失した。眩暈を来たすような負の感情も消え失せ、深呼吸しながらゆっくりと起立する。

 

「まだ分からぬか? 弱い犬ほどよく吠える。幻想たる現実から目を欺く輩、狂気に呑まれ滅びに至るのみ」

 朗読によって、水面で波紋が広がるように、周囲の景色が一瞬揺らいで見えた。山火事のように燃え広がる炎は、悪魔的な赤色から聖水のような白色へと急速に変化する。

「我が名は月、闇夜の眷属。母なる陽光をこの身に受け灯し、闇黒を祝福で照らすように。お前の炎をこの身に宿し、唾棄すべき騒音を焼き尽くさん」

 骨を折るように凄惨な燃え盛る音が、流れ星が去来するような無音へと変貌する。マッドは耳に、水が入ってしまったかのような違和感を感じ、平衡感覚を失う覚えすらあった。

「今一度、内なる狂気を清聴するが良い。喚き散らす獣に、月の讃美歌は届き得ぬと知れ」

 夜空を仰ぐように、月白が両手を広げた瞬間。墨に染まった天空から、霰のように蒼白い光が降り注ぐ。それは月白色の優美な炎に入り、油が注がれたように火勢が増す。そうして、激しくも美しい月光の波動は、円舞曲のように舞い踊る。

「うぜぇんだよ!! いい加減にしろ!! これはバトルなんだ、宣教師の会合じゃねぇ!!」

 マッドのラップは、最早咆哮と変わりがなかった。月白色の火炎が竜巻のように渦を巻き、木々や球場、キッチンカーなど、あらゆるものが灰燼と化す。

「規制、禁止、違反、不謹慎! 気に入らねぇモンをお上品に黙らせて、のうのうと生きてやがる、この世界は! テメェらに、居場所をとられたオレたちの怒りが分かるか!?」

 その目は親の仇と対峙したように血走り、その声は死に別れた恋人を嘆く慟哭のように掠れている。引っ提げたラジカセは、爆撃を受けたかのように黒焦げになり、横に被った帽子は凄まじい上昇気流によって、暗雲へと吹き飛ばされた。

「テメェらに思い知らせてやる! オレたちの叫びを聴かせてやる! 行くぜ、雑音舞踏軍、マッドヒート! 怒りの騒音を食ってみな!!」

 直後、マッドの身体が大爆発した! 月白色の光線と共に、不気味な爆炎が四方八方に放出される。鋭い眼差しで佇んでいた月白が、呑気にタピオカミルクコーヒーを飲んでいた濃紅が、ありとあらゆるものが喰らわれる。

 審判の日、人類を殲滅させる神の怒りが堕ちたかのように、この世界は爆炎と黒煙によって埋め尽くされる――!

 

(な、なんだ……!?)

 我に返ったマッドの目に映るもの――そよ風に戦ぐ木々、寝返りを打つ積雲、柔らかい青空の絨毯、照りつける太陽。

 相棒のラジカセが轟かせる、バトルビートの音は消え、そう遠くない場所から、自動車が通り過ぎる音が聞こえてくる。誰かの談笑や歓声が、浮ついた魂を肉体の中に引きずり込む。

(か、身体が……動かねぇ)

 どうやらマッドは、いつの間にか仰向けに倒れていたようだ。手足の筋肉がつり、それどころかピクピクと痙攣している。まるで一時間もサウナに籠っていたかのように、流れる汗が止まらないし、身体が異常に熱くてだるい。

「一糸纏わぬ、爛れた者よ。存分に燃えるが良い。お前が望んだ怒りの火によって」

 月白は、片手を胸に当てて柔らかにお辞儀した。白髪がふわりと浮き、艶やかな光を照り返す。

(うそだろ、おい! 確かにトドメを刺したはず!)

 マッドは顔だけを何とか持ち上げ、驚愕の眼差しで月白を見た。「反則だ!」と文句の一つでも叫びたかったが、エネルギーが尽きて声を張り上げる事すらままならない。と、他ならぬマッド自身の身体が、幻炎に包まれていることに気づく。

「堪能せよ、我が月光浴を。その狂気、無意識の海底に抱かれ、眠るまで」

 そう言い残して、月白は背中を見せた。コンサートを終えたピアニストのように、気品ある恍惚に泥跳ねしないよう、足音のない優雅な足取りで遠ざかる。そうして舞台裏に身を隠すように、月白はキッチンカーに乗り込んだ。

 

「説明しよう! 月白くんは詩の朗読によって、人の心に潜む狂気を増大させるのだ!」

 いつの間にか濃紅が、倒れているマッドの脇にて腕組みしながら立っていた。

「ヨーロッパの伝承では、『月光浴をすると気が狂う』とされるらしい。現代でも、満月の日には出産が多くなると噂されているな。潮が満ちるのと同様、満月による重力、あるいは波動によって、動物は野生化し、人は狂気に至る」

 マッドは顔を横向きにし、疲れ切った呼吸を繰り返している。濃紅の話が、あまり頭に入って来ない。

「つまりだ。君の怒りの火は、君が知らずの内に暴走して、君自身を焼き尽くしてしまったのだよ。きっと、いつも以上の怒りを感じたはずだ。今日はなんだか、火勢が強すぎるぞ――そんなことを疑問に思わないくらいには、狂っていた」

「み、水……」

 マッドは片手を濃紅の顔に伸ばす。

「おっと、水が欲しいのかい? 気が利かなくてすまないね。おじさんの水を分けてあげるよ」

 そう言うと濃紅は、飲み干したドリンクに残っていた氷水を、マッドの開きっぱなしの口へ、流し込んだ。

「ちべたぁ! 何しやがる!」

 頭にキーンと頭痛が来たマッドは、陸に打ち上げられた魚の如くのた打ち回り、もがき苦しんだ。

 

「猛暑の街のオアシスよ。よしんば、無粋な衆愚どもが浅ましい騒音により、真実の言霊を隠匿しようとも」

 気絶しているタピオカ屋さんの前で、月白が朗読をしている。フィギュアスケーターを照らすスポットライトのように優美な月光が、キッチンカーのカウンターや出入口から放出されている。

「お前が産んだ安息は、日が没しても尚、永遠に輝き続ける。今、月鏡の祝福を与えん」

 言い終わると、日の出によって夜が眠りに就くかのように、月光は透明になって消失した。ピクリと、タピオカ兄さんの指先が動いた後、「うぅ……」と額を押さえながら上半身を起こす。

「フフフ……。月はタロットカードにおいて正位置では、不安定、幻惑、トラウマなどを意味する。しかし、逆位置となると、過去からの脱却、未来への希望を意味するのだ」

 キッチンカーのカウンター越しに、月白を眺めながら、濃紅は腕を組んで不敵に笑っている。

「過去の怒りによって火が生じ、傷を受けてしまったならば、そこから脱却すれば良いのだ! 月白くんのもう一つの能力、月の狂気と対極をなす、月による精神の回復術!」

 

「大丈夫……ですか?」

 月白は兄さんに手を差し伸べる。

「ひ、ひいぃ!? 鬼!?」

 お兄さんは驚いて、大きく身を反らした。いきなり身体から発火して、気絶して、起きたら全身真っ白な青年が目の前にいたのだから、無理もない。

「誰が鬼だ……月白だぞ。この指輪を見てくれ。いつもはめている月輪だ」

 月白は若干悲しそうな表情を浮かべながら、左手中指を突き立てた。

「月白さんはそんな喋り方しませんんんーーー!!!」 

 タピオカ兄さんは、尻餅状態のまま後ずさった。勢い余って、キッチンカーの機材に後頭部をぶつける。「あいてっ!」と声を上げたお兄さんは、床に伸びてしまった。

「また気絶したのか……」

 月白は目を細め、何度も首を横に振る。

「月白くん、中指突き立てたらマズイじゃあないか。そこはこの子を怖がらせないよう、こうやってハートのポーズを見せ付けてだな」

 濃紅は「ワハハ!」と笑いながら、人差し指と中指で濃紅にハートマークを送り付けた。

「黙れ、濃紅」

 

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